ウェスタン三丁目の夕日

しばらく家族全員家をあけて旅に出ることになる。しかし心配なのは、いま飼っている犬を残していかなくてはいけない。そのほかにもどうやら鳥やら、牛やら、カンガルーやらいろいろ飼っているらしい自分。動物を置いていくのがとにかく不安。家を出て振り返ると、自分の家の門がやたらでかくて、しかもバックになぜかアメリカ中西部の切り立った岩山が見える。そして門の前に、お行儀よく馬が立っている。その馬が「大丈夫です」と目で語っている。ああ、そうかこの馬に任せていけばいいや、馬なら安心と思い、出かけていく。

車で出たはずなのに、いつの間にか線路みたいなところを仕事仲間のIさんと一緒に歩いている。私のダンナのお母さんから電話が入り、いまから駅に向かうから、そこで待ち合わせようということになる。線路なのに直角に曲がっているところがあり、こんな角を電車が走れるのだろうかと考えている。

駅に着く。どうやら地元に近い駅のはずなのだが、見たことがない。木造でものすごく古いボロボロの駅舎。その周りをぐるりと取り囲んで、さまざまな露店が営業している。とにかくどの店も昭和。働いている人も昭和。ランニングにステテコとかはいてる。看板とかも昭和。ミシンを置いて営業しているのは仕立て屋かクリーニング屋だろうか。話しかけたいけど、コワモテすぎると思ってやめておく。ダンナのお母さんが言っていた目印「コロコロカレー」の看板がない。「テンカラットダイヤモンド店」の看板もない。でもこの駅で間違いないだろう、近所に競馬場もあるし、とIさんが言うので、とりあえず駅舎の中に入っていく。

地下鉄のホームまで階段で降りていく。いつの間にか、同行者Iさんに加え、小野寺昭がいる。「こんなおじさんで申し訳ない」とか言っている。意味はわからないが、謙虚な人だなあと思う。
地下鉄に乗ると今度は小学生が一緒にいる。私は「いつまで冬休み?」とか聞いてる。「8日まで」と答える小学生に、「おばさんはいつが冬休み?」と聞かれて、「雪が降ったら休みさあ」と妙にかっこつけて答える自分。
Iさんが座席に寝っころがってのびのびしているが、もう少しで降りなくてはいけない。でもいまどの駅なのかがわからない。というかこの路線で、本当に家に帰れるのかもわからなくなってくる。
ものすごい不安になって、とにかく止まった駅で降りる。まったく見覚えない、がらーんとした駅。駅名の表示もどこにもないと思って焦っていると、柱にものすごくでかでかと昔の広告のような書体で、この路線の駅名が並んで書かれている。
「ビリー座キッド」
「締め切りさ大学祭さ」
「カワードボーイ」
「魅惑の呂」
ビリー座キッドの駅名がツボに入って大笑いしていたら目が覚めた。